見えないモノと、指の銃。
「母さん、うなされてたけど大丈夫?」
目の前には加々美さん。
そして俺の隣には三枝が座っている。
……そうか、ここは新幹線の中で、
どうやら俺は居眠りをしていたらしい。
そして尋常じゃ無い位うなされていた、と。
今日は加々美さんの家の本家があるという2つ隣りの県へと向かっている。
この後新幹線を降りたら、ローカル線に乗り換え予定だ。
「大丈夫です。
それより……その母さんって呼ぶの止めて貰えませんか」
車内に人が少なくて助かった。
これで乗車率100%越えとかされてたら泣きたい所だ。
……大声で起こされたみたいだから、あんまり楽観的にもなれないけど。
「じゃあ俺の事も名前で呼んでくださいね
どうせ着いたら全員加々美でややこしいし」
そう持ち出された交換条件で、
ようやく人目が気になる呼ばれ方とはさよならする事が出来た。
そして加々美さん改め秀明さんは、
俺が寝ていたせいで中断していた、彼の家にまつわる話を再開した。