見えないモノと、指の銃。
「な、なんだったんだ……?!」
誰かが言う。
向こうを覗きこんだり、
顔を見合わせてみたり。
「何なんだよ、あの黒いの」
その言葉から、
俺以外にも見えていたのだと分かる。
そしてやっぱり、
ドアは開かないみたいだ。
向こうもこっちも、
どうしたものかと思っていると、
どこからか声が聞こえてきた。
「いーち、
にーい、
さーん」
数を数えるそれは、
よく耳を澄ませてみると
玄関近くの、
さっきの黒い物が消えた方からだった。
「きゅーう、
じゅう」
10まで数え終えると、
床から黒く細い、
足のような物が出てきた。
それが大きくなるにしたがって、
太く、さっきの塊に近づいていく。