見えないモノと、指の銃。
1度手を離したから、さっきの場所からはズレた、既定の位置に戻っている。
とりあえずそこから少し下に持っていくと、大きめの道路が見えた。
近くに歩いている人も見えるけれど、
確かに顔までは確認できない。
……じゃあ、さっきのはなんだったんだ?
多分、ここだったと思う場所を
もう1度見てみたけれど、人の姿はなかった。
「見間違いだって、そんな気にするなよ」
丁度集合時間になり、
萩原に肩を叩かれながら移動した。
気のせいと言われれば、そうかもしれない。
何故なら、目が合った気はしたけれど、
顔自体の印象なんかは憶えていない。
残っているのは、目と、
何かを言いたげな唇の事だけだ。
気のせいである事を祈りたい。
そう思いながら学校へ戻った。