見えないモノと、指の銃。


彼女の、赤い唇が動いた。

『ありがとう』

少し外れたその声を残し、
体から重みは消えて、そして彼女の姿も、
もうどこにもなかった。


そして、俺の手足。

痛みが無い。
それはいい。

だけど痛みどころか、
さっき動いていた片腕以外、
服の下に膨らみを見つける事が出来ない。


俺は、一体どうすればいい?


このまま目が覚めても、
本来の物が戻っている事を俺は、想像出来なかった。


落とした手足は、どこにあるだろう。
探しに行けるだろうか。

また、今度は不可抗力の仰向けで、
空に浮かぶ雲を眺めながら思った。

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