見えないモノと、指の銃。
その人物は、俺の隣にしゃがみこんだ。
そして口を開く。
「だから、駄目って言ったのに」
その声は、誰だか思い出そうとしていた、あの声と同じだった。
変わらず、顔は見えない。
彼は手足を俺の、それらがあるべき場所に持っていった。
拾った時のように、スッと体に溶け込んで、戻ってきたのが解った。
それを見届け、誰かは立ち上がった。
彼の正体を確かめようと、
俺も追いかけるように起き上がり、
そして彼に向かって手を伸ばす。
……確かに俺は、
その人の手首を掴んだはずだった。
なのに目の前にいるのは、
キョトンとした顔の、三枝だった。
「……何で?」
「戻ったんですね」
驚いたようなそれは、
俺の意識がどうこうではなく、
手足の方へ向けられているようだった。