見えないモノと、指の銃。
「とりあえず、おはようございます?」
「ああ、おはよう……?」
起き上がると、机の上ではなく、
黒板の下辺りに寝かされていた事に気づく。
枕代わりにしていたらしい、鞄と、
その上にかけられていたカーデを持ち上げる三枝。
多分考えている事とは違うだろうけど、
俺も彼も、何かが腑に落ちないような、
不思議そうな顔をしている。
俺はといえば、
まず、あれは本当に、誰なんだという事。
それと、何でいきなり、目が覚めたのか。
その辺を、目の前の三枝にぶつけてみれば、彼の疑問は解けたようだった。
だけど、彼のその疑問も、
俺の疑問の答えも、何も返される事は無かった。
「まあ、いいじゃないですか。無事なら」
そう言われ、渋々と帰り支度を始めた。
「あ、そういやさ、」
俺は、もう1つ、気になる事を聞いてみた。
「手足無い間、俺、どうなってた?」
傍から見た現実の自分は、
果たして夢とシンクロしていたのか。
それがちょっと気になっていた。
だからそう尋ねると、
ニヤリと不気味に笑うような、
だけど神妙な、何か深刻な事を打ち明けるような、そんな顔をして
「聞きたいんですか?」
「……やっぱいい」
止めておこう。
そんな訳で、帰路に着いた。
今日はきっと、普通の夢を見るだろう。