キミ時間



「おーはし?」


陽気な声であたしを追いかけてくる彼。

一度も彼の姿を見ないで、あたしはスタスタと階段を降りていく。


「ちょっと、まってよ」

「…触らないで!!」


グイッと引き寄せられた肩。

驚いて、思わず声をあらげた。


「ひでぇ。」


なんて、傷ついた顔をする彼。


自分でも酷いことしてるのなんて分かりきってる。

でも、園田くんのせいで、あたしはいつもイライラしている。


先輩に誤解されてるんだから。


だけど、本当は自分が悪いのもわかっている。


すぐに弁解すればよかった。


でも、したからといって、先輩があたしを好きになってくれるわけない。



それが怖くて逃げただけなんだから。




「あたしに構わないでよ。」


「なんで?」


「迷惑なの。
 あたしには好きな人がいるし」


「………。」


ここまで言えば、分かってくれるよね。










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