キミ時間
――ピピッ
投げた携帯からメールの受信音が鳴る。
どうせあの人じゃないんだろうな…。
と思いながら、開くと、彼からのメール。
彼は彼でも彼氏ではない。
彼氏の友達。
【メール返すの遅くなった!!
今何してるの?(^-^)】
「またか…」
彼とメールをし始めてから、もうすぐ1ヶ月くらいたつ。
まめで、いっつもメールをくれる。
他愛もないメール。
その日の学校のことや彼氏のこと。
彼とはひま潰してメールしてるだけ。
いわゆるメル友。
【大丈夫です。
また、アイツ出掛けて暇してます(笑)】
とても笑えないメール。
彼は事情を知っているから、時々相談をする。
――ピピッ
すぐにメールが帰ってきたと思い携帯を開く。
メールではなくて、それは電話だった。
〔もしもし?咲久、今大丈夫?〕
優しい声であたしを呼ぶ声。
咲久、なんて親しげに呼ぶその声に少し落ち着く。
彼は、初めて会ったときからあたしのことを咲久と呼ぶ。
〔あ、はい。暇ですから〕
〔いいよ、無理にわらわなくても!
俺なんかに、気使っても、馬鹿らしいだけだよ〕
電話越しに笑う少し低めの声。
何度この声を聞いただろうか。
いつもあたしたちは、電話でしか話さない。
学校は同じだけど、彼はあたしの二つ上だから、なかなか会う機会はないし。
それに彼氏の目もあるから、例え会っても話さないようにしている。
ノイズ混じりの声。
あたしはその声しか知らない。
〔雪先輩、今何してたんですか?〕
雪…それが彼の名前。
三井 雪。