キミ時間
初恋の君
―Yuiri ―
「はぁ……」
朝から重いため息が優衣の口から吐きだされる。
昨日のことが優衣の頭からは離れない。
まさか、あんな所で再会するなんて。
重いもしなかった。
「ゆっいり~、おはよう!!」
バシッ、と誰かに背中を叩かれた。
むくれたように口を尖らせながら後ろを振り返ると、田中くんがそこにはいた。
「あ、おはよう」
昨日、あの現場に居合わせた彼。
何事もなかったように優衣に接してくるのは、田中くんなりの優しさ?
それとも、気まずさから?
優衣には田中くんのことは分からないけど、昨日のあれは彼にとって嫌な出来事だと思う。
「………誰、その人?」
最初に口を開いたのは、栞奈ちゃんだった。
重くはりつめた空気。
「あ……、」
「優衣里とは、中学の同級生です」
ニコリと嘘臭い笑みで栞奈ちゃんに言う。
はぁ、とその横で優衣はため息をはいた。