キミ時間

初恋の君





―Yuiri ―




「はぁ……」


朝から重いため息が優衣の口から吐きだされる。

昨日のことが優衣の頭からは離れない。


まさか、あんな所で再会するなんて。


重いもしなかった。




「ゆっいり~、おはよう!!」


バシッ、と誰かに背中を叩かれた。

むくれたように口を尖らせながら後ろを振り返ると、田中くんがそこにはいた。


「あ、おはよう」


昨日、あの現場に居合わせた彼。

何事もなかったように優衣に接してくるのは、田中くんなりの優しさ?

それとも、気まずさから?


優衣には田中くんのことは分からないけど、昨日のあれは彼にとって嫌な出来事だと思う。






「………誰、その人?」




最初に口を開いたのは、栞奈ちゃんだった。


重くはりつめた空気。


「あ……、」


「優衣里とは、中学の同級生です」


ニコリと嘘臭い笑みで栞奈ちゃんに言う。



はぁ、とその横で優衣はため息をはいた。








< 111 / 164 >

この作品をシェア

pagetop