キミ時間
「ちょ、どこいくの?」
田中くんに手を引かれながら、ドンドン校舎から離れていく。
困惑しながら少し後ろを振り返ると、ヒラヒラと手を振る栞奈ちゃん。
その後ろでは、彼がこっちを見ていた。
視線が痛い。
優衣を見ないでよ。
そんなことを思いながら、口を閉じた。
田中くんはきっと、何かに気づいた気がしたから。
そのあと、駅までなにも喋らなかった。
ただ、優衣の手を引く田中くんの手が暖かった。
それだけで、優衣の心が暖かくなる気がした。