キミ時間
それから、壱也とは一言も口をきいてない。
そのあと、そのことがクラスにバレて、壱也のファンだった女の子達から嫌がらせを受けたから。
なんでこんな目に?
そこから、優衣は男の子が苦手になった。
だいぶ時間はたったけど、まだ優衣は壱也のことが許せない。
「これが彼とのこと…」
「うん。」
田中くんにしては珍しく短い返事。
彼なら、もっとなにか言うのかと思ってたけど。
「優衣里はさ、まだ好きなの?」
真っ直ぐに優衣を見てくれる田中くんの瞳。
そんな真剣な表情に、優衣は自然と首を横に振っていた。
「引きずってるわけじゃない
ただ、それがトラウマみたいになっちゃって…」
「そっか……」
引きずってなんかいない。
むしろ、今まで頭の片隅にしかなかった。
再会して、また膨らんだだけ。
それだけ、優衣の中で大きくなる存在があるのかもしれない。
…田中くん。
こんなこと話せる人が現れるなんて。
「よしっ、」
沈黙が続くなか、田中くんが不意に立ち上がった。
「行くよ、優衣里」
「えぇ??」
腕を掴まれ、なにも言わずにスタスタと歩いていく。
どこにいくの?
なんて、質問には答えずに。
優衣の頭は、パニックを起こしながら、徐々に学校から遠ざかっていった。