キミ時間



他愛もない話をしながら、あたしたちは歩いていた。


そのうち、見慣れた風景が見えた。


「ここって…」


一ヶ月くらい前に、あたしと大地が映画を見ようとした場所。


「こないだは悪かった。

 だからさ、おわびに、お前が見たい映画一緒に見ようぜ?」


「みる!」



さっきまで落ちてた気持ちはどこへやら。


あたしって本当に単純だな。


そんなあたしに笑いかけてくれる大地。


それだけで、あたしは幸せだよ。




――ピピッ


「あ、悪い電話」


チケットを買いに行こうとした瞬間、大地の携帯が鳴った。


少しだけ距離をとる大地にお構いなしに、あたしは何を見ようかと考えていた。



こうやって二人で映画とかって、あんまりないからな。

面白いやつにしよう。


「決まったか?」


電話を終えた大地が戻ってきた。


まあ、優柔不断なあたしが決めているはずもなくて。


「まだです。」

「だと思った」


ケタケタと笑う大地に、少し頬を脹らませて睨んでみた。


すねてはみたけど、こんな風にあたしを分かってくれる大地に、内心ニヤけそう。









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