キミ時間



――カタン…


食べ終わると、あたしは箸を置いた。

まだ食べてる大地。


「ちょっと、見たいところあるから、先に行っててもいい?」


「え、栞奈…」



あたしは大地の声を聞かずに、足を進めた。







「はぁ…」

なんで、こんな風に考えちゃうんだろう。


あたし、彼女でもないのに。


こないだ、あたしは幼馴染みとしての特権?みたいなのを大地からもらった。

そこから、欲が出てきたんだ。


葵ちゃんがやらせてもらえない、大地を起こすっていう、あたしだけの権利。


だから、今日は急に遊びに連れ出して、葵ちゃんから連絡が来るとドロドロとした気持ちが襲ってくる。


あたしだけを見てほしい。


葵ちゃんのほうに行かないでほしい。


さっきのごめんは、そんなあたしの欲を叶えてあげられなくてごめん、てことなのかな。


大地…こんなに一緒にいるのに、あたしわかんないよ。


大地の気持ちが。




――ポタッ


気づくと、あたしは涙を流していた。


「よかった…」


ここは、あんまり人が来ない屋上。

だから、誰にも見られない。


今だけは一人でいたいから。







「栞奈!!」


風が吹いた気がした。

涙でぼやけた視界に、大地が見えた。









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