キミ時間

最初で最後の





―Saku ―




「あたし、先輩が好きです」


―ガタンッ


勢いよく立ったせいで、あたしが座っていた椅子は倒れた。


だけど、そんな音気にならないくらいに、二人しかいない教室は静まり返っていた。



「…咲久、」

「あっ、」


あたし何言って…。


今更ながら、恥ずかしさが込み上げてくる。


「ちがっ、あたし…」


別に、先輩と付き合いたいとかじゃなくて。


「うん、ありがとう」


そう。


あたし、その笑顔が見たいだけなんだ。


「先輩、あたし…先輩が好きです」


憧れとか、尊敬とか、そんなの飛び越えて。


その笑顔に惹かれる。




「ありがとう、でも…ごめんね

 こないだも言ったけど、俺は好きな子いるから」




「うん。言いたかっただけ

 今のあたしは、それ以上は望んでいないから安心してください」




なんだか、少しだけ心が軽くなった。









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