キミ時間




「こんなこと言うのは失礼って分かるんだけど、咲久には隠しておけないよ」


ごめん、と呟いた先輩。


あたしは、何て言えばいいのかも分からずに。

ただ、立ち尽くしていた。




「どこが似てるかって聞かれたら分からないけど、どことなく…彼女に似てるんだ」


「同じ高校の人?」


「ううん、俺の幼馴染み

 近くの女子高に通ってるんだ」


「告白、しないんですか?」


「うん。アイツには、好きな男がいるから」


そういった先輩の顔は、あたしを振った時みたいに、悲しくて切なそうな顔をしていた。


同時に、あたしの胸も張り裂けそうになる。


「………ッッ」



抱きしめたい。


理性なんてなかったら、あたしきっと両手を伸ばしていたかもしれない。


それくらい先輩が…愛おしく感じた。


振られた今でも好きなんだ。


想いを留めてる先輩は、きっともっと辛いんだ。




「先輩…、星を見ましょう」




泣きそうなのをこらえて、あたしは先輩の手を強く握りしめた。


話さないように…。


離れないように…。







< 136 / 164 >

この作品をシェア

pagetop