キミ時間
答えなんて聞かなくてもわかる。
先輩の答えは決まってる。
「咲久をアイツの身代わりなんてしないよ」
そんなこと分かってるけど、改めて言われると、キツイ…。
だけど泣きたくなんてなくて、あたしは拳をにぎりグッとこらえた。
「で、ですよね…
あたしなんて」
「違うよ。咲久が嫌なんじゃないんだ
咲久だからダメなんだ」
あたしだから?
「…咲久はさ、俺の妹みたいな子なんだ
そんなこと言われても困ると思う。だけどね、俺はそう思うからこそ咲久とは付き合えない
咲久が嫌いなんじゃない、むしろ好きだと思う
だからこそ、俺なんかよりもいいやつと付き合ってほしい
咲久のことを好きだって思うやつとさ…」
そんなことを先輩が考えてるなんて思わなかった。
好きだけど付き合えない。
そういってくれた先輩。
あたしは、こらえてた涙を一気に流した。
こんなあたし、困るよね。
だけど、今だけは…。
今日で最後だから。
先輩を好きでいるのは…。
『あ、もしかして、けーやの彼女?』
『えっ!?あ、はい』
『あいつなら今、担任に呼ばれてるから待ってれば来るよ』
初対面だったあの日、男の人がこんなに優しく笑うんだということを、あたしは初めて知った。
『あ、咲久…おはよう』
2回目に会ったときには、すでに呼び捨てだった先輩。
『もしなんかあったら、メールでもしてよ』
なんて渡されたメアド。
今までなら、彼氏いるときにメールなんてしなかったのに、先輩は違った。
先輩だから…
雪先輩だから、あたしは好きになったんだ。