キミ時間


だけど、やっぱり…




「やっぱ無理無理!!」


なんて、目の前にして怖じ気づいてしまった。

すぐそこにあるフェンスの奥では、サッカー部が練習している。


もちろん、壱也の姿もある。


「ここまできたんだからさ、頑張れよ」


優しく悪いかけてくれる田中くんには申し訳ないけどさ、優衣にはそんな度胸ありません。


「…まぁ、決めるのは優衣里だよ。

 一つ言えるのは、俺は決心がつくまで待つよってことな」


ぽんぽん、と優衣の肩を叩くと、田中くんは近くにあるベンチに腰かけた。


決めるのは自分。


ここまで連れてきたのは田中くんで、壱也と和解を進めてきたのも田中くんで。

そこに優衣の意思なんてないからこそ、最後は自分で決めなきゃいけない気がする。


でも、今さらなにを言えばいいの?


付き合っていたときの気持ち?


それとも、本当に罰ゲームで優衣に告白したの?


どれも今さらで、聞くのが怖い。








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