キミ時間
そうこうしているうちに、時間はだいぶ経っていた。
田中くんは手をパタパタとさせながら暑さをしのごうとしている。
ポタン…と、落ちた汗。
そんな落ちた汗を見ながら、深呼吸した。
「うん…、行くよ」
そう決意を固めて、優衣は近くのベンチに座った。
それを見た田中くんは、ゆっくりと笑い、隣に腰かける。
壱也の部活が終わったら、ちゃんとはなそう。
なにを話すかとか、全く決まってないけど。
とりあえず、言葉を交わせるなら。
あの時、聞けなかったことを聞いてみよう。
「あのさ、」
「え、なに!?」
突然、田中くんが声を発した。
田中くんの方を見ると、田中くんは真っ直ぐとグラウンドを見ている。
「もしもさ、アイツが優衣里のこと好きなら、より戻すの?」
よりを戻す?
そんなこと考えたこともなかった。
チラッと優衣をとらえる彼の瞳。
優衣は自然に首を横に振る。
「もう、壱也のことそんな風に見てないよ。
優衣にとって、壱也は過去のひとだもん」
そう言いきったのは本心で。
ちゃんと言えたのは、田中くんが隣にいるから。
優衣は少しだけ震える手を握った。