キミ時間
「そろそろ話ついた?」
困惑した雰囲気に合わないような軽快な声。
「あ、田中くん…」
後ろを振り向くと、ニコニコと笑っている田中くんの姿。
気づくと、話始めてからだいぶ時間が経っていた。
「優衣里、今日はもう帰ろう?」
生暖かい手が優衣の手に触れる。
チラッと壱也の方を見ると、コクンと優しく頷いた。
「うん、分かった…」
子供のように手を引かれ、優衣は田中くんの後ろをとぼとぼ歩き始める。
「優衣里、本当に俺、ずっとすきなんだ
だからさ、これだけは信じてくれよ」
遠ざかる優衣に向かって叫ぶ壱也。
優衣には振り返る度胸なんてなくて、下を向いたまま歩いた。
田中くんは、この状況をどう思ってるんだろう。
壱也と優衣を見て、何を考えていたのかな。
もしかして、優衣のこと…嫌いになってないよね?
ぐちゃぐちゃする頭の中。
真っ直ぐと前を向いて歩く田中くんのことが、ますます分からない。
知りたいと思ったんだ。