キミ時間
それぞれの時間
好きだから。
―Kanna ―
「やっぱり泣いてた…」
静かに近寄りながら、あたしを真っ直ぐに見てくる大地。
「なんで…?」
なんで来るの?
あたしのことなんて放っといてくれたらいいのに。
だけど大地は優しい。
だから、来ちゃうの?
「あのさ、追いかけるのダルいから、泣くなら俺の前で泣けよ?」
「え?」
呆れたようため息をはき、あたしの涙をぬぐってくれる。
いつもみたいに意地悪で、だけど微かに笑ってる大地。
いったい何を考えているの?
「栞奈はさ、誤解してるよ?」
「なにを?」
「今、考えてることとか思ってることとか」
あたしが、考えていること?
そんなの一つしかない。
“あたしさえいなければ、二人は付き合うのかもしれない”
だから、辛くて苦しい。
あたしが大地を好きになったことで、二人が恋人同士になれないのかもしれない。
それは、あたしのせい。
「俺、葵のこと好きなんて言った覚えないんだけど…」