キミ時間
「あ、咲久…」
その日の放課後、あたしは聞き覚えのある声に呼び止められた。
それは、ノイズ混じりにしかなかなか聞かない声。
「雪先輩…」
いつもは学校で見かけても、声なんてかけないのに。
今日に限っては、彼から呼び止められた。
「どうしたんですか?」
「え、いや…あの、」
ヘラヘラと苦笑いをする雪先輩。
なんだか怪しい。
「あ、ジュースでも飲まない?」
「いらないです。それより、通してください…」
あたしは、無理矢理に雪先輩がいる方に歩こうとした。
パシッ!!
「行かないで…」
彼の手が、あたしの行くてをはばんだ。
でも、それは遅かった。
あたしの目の前には、見知らぬ女と仲良さそうに歩いている彼氏の姿。
そうゆうことか。
だから、学校なのにも関わらず彼は声をかけてきたんだ。
「あの人…いつからですか?」
「…1ヶ月くらい前からかな。」
罰が悪そうに答える彼。
雪先輩とちょうどメールをし始めた辺りだ。
だから彼は、あたしとメールをしていたのか。
それは、なんだか…
虚しい。
あたしを可哀想と思ったんだろうな。
この人は。
優しい人だから。