キミ時間
「すねんなって~」
あーもう、優衣に近づかないでよ!!
なんて言えたらどんなに楽か。
でも、そんなこと言うことさえできない。
男の子と話すのは、緊張して言葉が出てこなくなる。
田中くんは、それを分かっているのに、優衣に話をさせようとする。
ひどい人だな…。
「終わった…」
「こっちも終わり」
優衣より倍近くの量をやってのける田中くん。
トントンと、まとめたプリントを田中くんは一人でもった。
「あ、」
優衣も持つよ。
そう言いたいのに、なかなか言葉が出ない。
「こうゆうのは、男の役目です」
にかっ、と真っ白な歯を出して笑った。
どうして今、優衣の言おうとしたことわかったんだろう?
田中くんは時々不思議だ。
優衣の考えてることが筒抜けてるみたいに、分かってくれる。
だから、少しだけ他の人と違って苦手じゃない。