キミ時間
放課後、優衣は担任に呼び出されて明日の授業の準備をさせられている。
もちろん、彼も一緒。
「早川、そっち持つからこれ持って。」
はいよ、と明らかに軽そうな荷物を手渡してきた。
優衣が持とうとしていたのは厚紙がたくさんはいった段ボール。
これくらいなら、優衣でも持てるのに、田中くんは優衣のことをどかして段ボールを持ち上げる。
「いい、よ。優衣…持てる」
「はいはい、一応女なんだから、男に任せとけばいいんだよ」
男、男と必要以上に繰り返す言葉。
男とか女とか、関係ないと思う。
そんなこと思うけど、一番気にしてるのは自分。
「…、ごめんね」
「そう言うときには、ありがとう、って言うの!」
ニコニコと笑う彼。
そんな彼を見ていると、なんだか申し訳なくなる。
「早川は気にしすぎ。
確かに俺、男だけど、お前より身長低いんだから男とか思わなくていいんだよ」
真っ直ぐと彼を見ると、彼のつむじが見える。
優衣の身長は、普通の女の子に比べて、大きい方だ。
田中くんの身長は逆に、普通の男の子に比べて、低い。
だから優衣は、田中くんのかとをいつも見下ろしてしまう。
確かに、男とに見なければいい。
でも、優衣より身長が低くても田中くんは男の子だ。
そう思うと、意識してしまうんだ。