キミ時間
そこには、咲久ちゃんの姿はなく、代わりにいたのは
「啓矢先輩…」
咲久ちゃんの彼氏がいた。
「あ、優衣里ちゃん」
少し動揺した啓矢先輩は、なぜか座り込んでいた。
「…、あの」
また、ことばがでない。
この人も、男の人だ。
頭がそう認識して、言葉を発せない。
「…咲久に、謝っといてもらえないかな」
「……はい、」
優衣は臆病で、またダメだった。
なにも届かない。
誰にも。
「あ、たなかくん」
そして、また…彼を傷つける。
「俺は、いつもお前を傷つけてばかりだな」
横を通りすぎていく彼になにも言葉をかけれない。
田中くんは帰ってしまった。
残りをやろうと教室に戻ると、すべて終わっていた。