キミ時間
越えられない壁
―Kanna ―
また、朝が始まる。
今日は日曜日なのに、あたしはなぜか大地を起こさねばならない。
「大地ーー!!」
近所迷惑なほど大きな声を、あいつの耳元で叫ぶ。
「…朝からうるさいな!!」
何度同じことを繰り返すのか。
うるさいのが嫌なら、早く起きればいいのに。
むしろ自力で起きろ。
あたしは、ブツブツ文句を言う大地を横目に少しにやけそうな顔を押さえた。
空は快晴。
最高のお出掛け日和。
「では、下でお待ちしております」
ヒラヒラと手を振り、鼻唄混じりにあたしはしたに降りた。
今日は、今から大地とお出掛け。
と言っても、デートじゃないけどね。
“映画でも見に行かね?”
昨日、大地からいきなし誘われた。
どうやら、おばさんが映画のチケットをくれたらしい。
だから、あたしを誘ってきたのだ。
「どうせなら二人で行けばいいのに~」
「あはは。それじゃあ、デートみたいになっちゃうじゃん」
なぜか膨れっ面なおばさん。
あたしは、出されたココアをグイッ、と飲み干し、苦笑いを浮かべた。
映画に行くメンバーは、あたしと大地と中学の同級生。
だから、デートではない。
でも、すごく楽しみ。
大地とでかけるのは、久々だから。