キミ時間



「で、お昼どする?」


映画の時間まではまだ余裕があるから、先にお昼を食べることにした。


「俺、いい店知ってるよ!」

「どこ?」

「こっからすぐのところにある、イタリアンだよ」

「じゃあ、そこにしよか」



あたしたちは、ケンが提案したお店に行くことにした。


ケンとみっこを先頭に歩き出す。

そうすると、自然とあたしは大地の隣になる。


もう、手は繋いでないけど、あたしはそれだけでも嬉しい。


「…、栞奈怒ってない?」

「へ、なんで??」


不意に困ったように聞いてきた大地。

あたしはなんのことを言ってるのか分からず、首をかしげた。


「映画。栞奈、ホラーとか苦手じゃん」


そのことか。

あたしは、クスッと笑った。


「いいよ、別に。

 怖くなったら、大地になんとかしてもらう」


「あぁ、当たり前だろ」


何気ない優しさ。

本当に気遣いやだな、大地は。


あたしは嬉しくて、大地には分からないように笑った。


こんな風に、今日一日楽しくなるといいな。



そんな風にあたしは願っていた。



でも、その願いも虚しく、数分後に打ち砕かれた。











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