キミ時間
曖昧な関係
―Saku ―
「ど、少しは落ち着いた?」
先輩から渡された缶ジュースを受け取り、あたしは一口口に含んだ。
さっき泣いたから、喉乾いてた。
甘いオレンジの味が口に広がる。
「ありがとございます…」
「ん、なにが?」
「あたし、先輩がいてくれたおかげで、なんだか元気でました」
少し照れたように笑う先輩。
そんな先輩を見て、あたしも照れてしまう。
「…咲久ってさ、なんでもストレートに言い過ぎでしょ」
ぽん、と頭に手を当てられ、あたしは軽く撫でられた。
大きくて暖かい手。
あたしは今まで、この暖かい手を知らなかった。
ううん、この手だけじゃない。
あたしはまだまだ、先輩のこと、なにも知らない。
電話とメールだけのつながり。
これからも、連絡を取ったら迷惑かな。