キミ時間
「まあ、田中くんは分かりやすいからね~」
分かりやすい?
「うちのクラスで気づいてないのは優衣里だけだよ?」
優衣だけ??
だって、そんな素振りなんてなかったよ。
入学してから今まで、そんな素振り…。
「…、まあ、気づかないのは無理ないよ。
あんなことがあったら」
栞仲ちゃんの言葉に、優衣の心臓は一瞬止まるかと思った。
あんなこと。か。
そうさせたのは、優衣自身なんだよね。
優衣はため息を漏らし、残りのパンをたいらげた。