キミ時間


「まあ、田中くんは分かりやすいからね~」


分かりやすい?


「うちのクラスで気づいてないのは優衣里だけだよ?」


優衣だけ??


だって、そんな素振りなんてなかったよ。

入学してから今まで、そんな素振り…。


「…、まあ、気づかないのは無理ないよ。

 あんなことがあったら」


栞仲ちゃんの言葉に、優衣の心臓は一瞬止まるかと思った。


あんなこと。か。


そうさせたのは、優衣自身なんだよね。


優衣はため息を漏らし、残りのパンをたいらげた。









< 52 / 164 >

この作品をシェア

pagetop