キミ時間


入学式の日。

優衣と田中くんは初めて言葉を交わした。


小柄な体型に、整った顔立ち。

白い肌に、男の子にしては少し長い髪。



誰もが一瞬は見まちがえると思う。




「初めまして、田中真央です」


名前までもが…勘違いを生む。


優衣はあの日、田中くんを女の子と勘違いした。



「早川優衣里です。優衣里って呼んでね」


満面の笑みで、そう言った優衣。

あの瞬間が来るまで、話すことなんて大丈夫だった。


入学式から二日後。


「真央、おはよう~」

「あ、おはよう優衣里」


名前で呼ぶ仲だった優衣達。

なのに。



「そう言えばさ、優衣里って男の子大丈夫になったの?」


咲久ちゃんのその一言。


「え、まだ無理だよ!!」

「え、でもさ、田中とは普通に会話してんじゃん」


ほら、と男子と楽しそうに話す彼の姿。


男の子?

真央はおとこのこなの??


優衣より低い身長な男の子はたまにいるけど、あそこまで低い男の子ははじめてみた。


優衣、今まで男の子と普通に話してたの?


瞬間、鳥肌がたった。





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