キミ時間
「はぁ…」
無音のため息が漏れる。
彼とは距離があるから、優衣のため息なんて気づいていない。
それに、いまさら優衣に声なんてかけないよね。
かけたとしても、また同じことを繰り返してしまう。
「はぁ…」
考えてもしょうがない、か。
チラッと彼のほうを見た。
あ。
「………」
「………」
沈黙が流れる。
どうしてだろう。
田中くんと目があってしまった。
なにか言った方がいい??
なにを…?
「ごめん、」
先に言葉を発したのは、田中くんの方だった。
なんで謝るの?
田中くんは悪いことしてないのに。
「…俺、早川のこと分かってたのに、あんなことして最低だよな?」
ごめんな、と頭を下げてきた。
そんな彼を見て、優衣の心が少しだけ軽くなった気がした。