キミ時間
「…名前、久々に呼ばれた。」
帰り道、途中まで同じ方向の優衣達。
それとなく言ってみた。
少しかんだけど。
「あ~どうせ気持ちばれてるし、もういいかなって」
「………」
そっか。
田中くんは優衣のことが好きなんだよね。
今までギクシャクしてたから、なんだか実感がわかない。
田中くんが優衣のことを……。
「優衣里もさ、俺のこと真央ってまた呼んで~」
甘えたような口調。
優衣の反応を楽しんでるみたい。
「無理だよ!!」
「あはは、即答かよ~」
顔を真っ赤にして拒否する優衣を見ながら、田中くんはお腹を抱えて笑った。
ドキドキと高鳴る心臓。
熱くなる体温。
いつも、彼といると調子が狂う。
はぁ、とため息をこぼし、まだ笑っている田中くんを見る。
うるさくセミが鳴いている外の音は、なんだか優衣には遠く感じる。
きっと暑いせいだ。
夏が始まって、体がこの温度に慣れていないだけ。
もう一度息をはいた。
でも、確実に近づいている。
教室であった距離が嘘みたいに、なくなっている。
優衣達の距離は、今何センチだろうか。