キミ時間


そんな優衣に気づいた田中くんは、いつものように笑ってから、相手のボールを奪いにいった。


優衣は優衣で、力か抜けたのか、さっきまで同じように座り込んだ。




気づいてくれた。


あれだけいるなかから、優衣を見つけてくれた。


それが、少しだけ嬉しかった。




「…優衣里がそんなことするなんて、思いもしなかった」


ポカーンと口を広げた栞奈ちゃんは、まだ驚いている。



「あのね、栞奈ちゃん。


 優衣さ、頼りないし上手いこととか言えないけど、栞奈ちゃんの話くらいなら聞いてあげれるよ?

 だから、一人で溜め込まないで、辛いときは優衣に話して…」



優衣が精一杯出来ることだか。


栞奈ちゃんを見ると、フフっ、と笑いながら、頷いた。


優衣もつられて笑う。

それと同時に、試合終了のブザーが鳴った。



結果は、2対3で田中くんたちの勝ちだった。












< 85 / 164 >

この作品をシェア

pagetop