キミ時間
そんな優衣に気づいた田中くんは、いつものように笑ってから、相手のボールを奪いにいった。
優衣は優衣で、力か抜けたのか、さっきまで同じように座り込んだ。
気づいてくれた。
あれだけいるなかから、優衣を見つけてくれた。
それが、少しだけ嬉しかった。
「…優衣里がそんなことするなんて、思いもしなかった」
ポカーンと口を広げた栞奈ちゃんは、まだ驚いている。
「あのね、栞奈ちゃん。
優衣さ、頼りないし上手いこととか言えないけど、栞奈ちゃんの話くらいなら聞いてあげれるよ?
だから、一人で溜め込まないで、辛いときは優衣に話して…」
優衣が精一杯出来ることだか。
栞奈ちゃんを見ると、フフっ、と笑いながら、頷いた。
優衣もつられて笑う。
それと同時に、試合終了のブザーが鳴った。
結果は、2対3で田中くんたちの勝ちだった。