キミ時間



「あ、優衣里!!」


栞奈ちゃんと帰ろうとした時、後ろから田中くんに呼び止められた。


「さっきはサンキュ。
 お前のおかげで頑張れたよ」


「あ、ううん。あたしはなにも…」


嬉しそうに喜ぶ彼を見てると、なんだかこっちまで嬉しくなる。


「田中くん、おめでとう。お疲れさま」


つられて優衣も笑う。


田中くん、すごかったよ。


「あのさ、真央だってば…」



「え、あ~うん。

 ……真央?」


何カ月ぶりかに呼んだ名前。


気恥ずかしい。

顔を伏せたくなる。


でもそらせない。


彼の顔がとても、あまりにも嬉しそうだから。


優衣は、目が離せなかった。


「優衣里?」


「え……?」


和んでいた雰囲気に突然と落とされた声。


優衣たちはいっせいに声の方を見た。








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