キミ時間
――え…………
なんでこんなところにいるの?
今日の対戦相手って…。
「相手校って、N高?」
「あ~そうだよ」
だから。
だからいるんだ。
彼が…。
この場から今すぐ逃げだしたい。
でも、足が重くて動かない。
「…久し振りだね、優衣里」
サラサラと流れる髪をかきわけ、真っ直ぐにこっちに近づいてくる。
「………」
「怖がらないで、優衣里」
“おいで”
“騙されてやんの、ばーか”
“アンタなんて、相手にしないっつの”
止めて!!
うるさいから、喋らないで。
「会いたかったんだ、ずっと」
そう言いながら、優衣にまた一歩近づいてくる。
「止めて、それ以上近づかないで。
優衣は壱也に会いたくなかった」
夕焼け空に優衣の声が響き渡った。