キミ時間


それに気づかれたくなくて、あたしは顔を下げたまま。




「……やめろよ、それ。」


不意に、大地の声が聞こえた。

消えそうなほど小さい声。


あたしは、とっさに顔をあげた。


目の前に、なんとも複雑そうに笑う大地の姿。


「…だい、ち…??」


何て言ったらいいんだろうか。


こんな風に笑う大地を、あたしは初めて見た。




何か言わなきゃ…。



でも、なんて?




「あの、」


「大地!!」



呼んだのは、あたしじゃない誰かの声。



声を聞いて、すぐにわかった。



あの子の声だ…。




「あおい…」




あたしの声を遮ったのは、彼女の声。


いつもと変わらない笑顔の彼女。

でも、どこか焦ったように近づいてくる。



「あっちで、バレーしない??」



彼女が指を指したのは、彼女達のクラスのみんながいる方。


大地は、うんともすんとも言わずに、彼女に連れていかれた。







< 9 / 164 >

この作品をシェア

pagetop