精霊達の棲家
最初は足の接地・着地感がなく、上滑り状態であった。
多分信じ難く、「百聞は一見に如かず」であろう。
足が浮き上がってしまう、否 脳からの浮き上がった感覚情報の伝達指令に基づき、恰もラッコが水面で餌を喰らっている姿の如く身体が反応するのである。
二十人程の参加者は高齢者に属する人達であるが、私の様な脳卒中後遺症の人はいない。
ラッコの姿を見て、トレーナーは慌てて駆けつけ、周辺の参加者は滑稽にさえ映るその姿を見て笑いだす人もいた。
ふざけて(・・・・)いる、と思ったのだろう。
回を重ねる毎に次第に慣れてきたが以前の親水感はない。
ぎこちなさと違和感は消える事は無かった。
一月余り後、逆の現象が顕れた、幻覚だったのだろうか。
プールから上がった途端、足が異様に重く、思わず手で足膝を引き上げた程だ。
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