精霊達の棲家
近所の人が発見、直ちにその家のリヤカーで町医者へ駆け込んだ。
止血・検査・麻酔・縫合、当時のしかも片田舎の事ゆえ薬品や医療器具・医師の技量等推して知るべし、である。
お袋は報せを聞き急ぎ駆けつけ、うろたえつつ人手不足の折出来る限りの医者の手伝いをしながら付添、その夜痛みで大泣き、嘔吐・泣き疲れた頃発熱・束の間の眠り・再び大泣を繰り返した。
お袋は二日間殆ど眠らずに看病したとのこと。
右頭の頂部に小石が突き刺さり深さ10mm余に達していたが、急所は外れ且つ頭蓋骨も幼児期の弾力が幸いしたのか致命傷には至らなかった。
今も残る頭の傷跡、直径約1cm 中心部は少し凹み 毛髪はなく外周部の薄毛が当時の衝撃を物語っている。

満州事変の頃より職業軍人として軍務に就いていた親父は、終戦時戦地から一旦帰宅後再び軍の戦後処理の用務に赴いていた。
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