精霊達の棲家

疎開先とはいえ大都市から比較的近いこともあって食料事情は厳しく、微々たる配給品では7人の口を潤すには余りにも心許ない。
借りた荒地で主にサツマ芋作りにも精を出したが、即収穫とはいかぬ。
寝ていても腹は減る。
お袋が農家を訪ね歩き、反物・衣類・茶器骨董そして手放すに忍びない幾許かの貴金属・貴重品さえもその対象となった。
日を追って買出しの道程は遠くなったが、此の地で親しくなった近隣の人達からの援助は何よりの支えとなった。
親戚や親父の関わるネットワークからの物資は逆に近隣の人達と分かち合った。
2歳・3歳・5歳・7歳そして姉(ねえ)やのハル、その食い扶持や生活は全てお袋の双肩に掛っていた。
その年の秋、親父不在であったが、暫らく振りに一家揃って山里を歩いた。
陽は西に傾き間も無く山間(やまあい)に沈もうとしていた。
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