精霊達の棲家
天候の急な変化に身体が順応しないのか、とも思いつつ温湿度計を覗いてみると殆ど変化
はない。
冷や汗か脂汗か不快な湿りがTシャツに絡み、身体のベト付きが妙に気に懸った。
テラスに出た。立ち上がった瞬間軽い立ち眩みがあった事を記憶している。
椅子に腰かけ大きく深呼吸した。
囁くような風が、湿っぽい身体の熱を運んでくれているかの様で殊の外心地よい。
眼を遣れば 右に鴨川沖太平洋の水平線、少し霞んでいるが空と海との領域は明確である。
海面はいわゆるマリンブルーに比して色濃く映え、その下方に街並みが展がっている。
左側に連なる山々は、房総九十九谷に繋がる清澄山系・妙見山等南端の山並みである。
右手に目を遣れば峰岡山系、中央の頂に自衛隊のアンテナが見える。
梅雨が少々遅れているとは言え、この時期さすがに緑濃く、初夏の様相である。とりわけ
濃い緑と淡い緑、いやむしろ萌黄色と称したほうがいいのだろうか。

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