精霊達の棲家
何事もなかったように平然と居座るその姿は、最早人間ではないサイボーグそのものである。
「何故俺だけが ! そんな馬鹿な事が !! 」 
「おーい、おーい ! 助けてくれー !! 」
ゴンドラは進む、スピードが増す、景色が疾る。
更に加速、遠くに見え隠れしていた海岸線が、忽ちのうちに目前に大きく展がって来た。
少し霞んでいるが、コバルトブルーとスカイブルーとの境界は鮮やかに色分けされている。
「ごーん ごーん」
と遠くに聞こえていた打撃音が、瞬く間に迫り
「ぐわーん ぐわーん」
と腹に響く音に変わっていた。
時に連続的に、時に断続的に打ち鳴らされる。
激しい衝撃に身体が打ちのめされ阿鼻叫喚の極に達した時、眼が覚めた。
三日目は朝から夢にうなされ、窮地にわめき妄想と悪夢の狭間を漂っていた。
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