精霊達の棲家

何れにしてもこのままでは、座して死を待つしかない。
極々短い時間であろうが、“死”が何度も何度も頭をよぎった。
此岸から彼岸へ、旅立ちはこんなにも呆気なく儚いものなのか。　
現実､非現実、妄想に近い空想、混濁・・・、女房のこと、子供のこと、孫たちのこと。
そして関わりのある親しい人達、次々と脳裡に浮かぶ。
映画か落語であったか、ある記憶の扉が開いた。
棺に納まっている‘私’。
心臓停止・瞳孔、‘死’の確証であるが、耳は研ぎ澄まされ、棺外のざわめきが手に取るように聞こえる。

プラント等設備診断の領域でＡＥ(ｱｺｰｽﾃｨｯｸ･ｴﾐｯｼｮﾝ)の分野があり、これは人がノイズや冪(べき)を除外し、自らの関心事等を聞き分け必要な情報のみを選択的に取り出せる能力として“ｶｸﾃﾙﾊﾟｰﾃｨ効果”と呼ばれる現象を活用した音響診断技術である。