精霊達の棲家
時折笑いが起こり、ジョークの一つでも出るようになれば、出口が見えた証である。
両隣りのベッド住人で何とも世知辛く、嘆かわしい現実があった。
前者は車椅子をベッド脇へ配置しようとしときの事。
狭さ故のトラブルは前述したが、その事に起因するのであるが。
カーテン越しに
「車椅子入れますヨッ」と声をかけ、斜め後ろに入れたところ大声が返ってきた。
「痛てーなっ !!  このヤロー 」ときた。
ベッド側に座っていたら車椅子の把手先端が、足に当たったという。
「入院が伸びたらどうすんだよー」
と、べそをかきながら小声で喚いていた。
何が起きたのか訳が分らなかったが、カーテンを開けると、頻りに足を擦りながら
「声を掛けたんですが、聞こえなかったですか?」
に対して
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