精霊達の棲家
「聞こえたよー、だけんど当たるとは思わなかった!」
「狭すぎるんだよ、ここは !! 」
と豪い剣幕であった。
思わず吹き出しそうになったが、何とか堪えた。
後者は前述の脳卒中が原因で重症化し、隣りのベッドに入院してきたEさん。
余生を家で過させたいと退院、その後間も無く亡くなったと後に孫娘から聞いた。
不逞の輩との不運な出会いのせいばかりではなかろうが、亡くなるまでの数日の日捲りを、厭な思いで埋めねばならなかった心情を思うと、遣る瀬なく無性に腹が立った。
患者の殆どは私よりかなり年配者である、たまたまかも知れぬが脳卒中の患者は意外と少ない。
それぞれがそれぞれの思いで入院し、退院してゆく、過去と現実そして見えぬこの先。
人間万事塞翁が馬である。

リハビリ病院への転院の日が決まったと連絡を受けた、7月16日である。
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