宵の花-宗久シリーズ小咄-
3
「お帰りなさい、母さん」
彼女が言った通り、母が帰宅した。
しかし、何やらそわそわと辺りを見回している。
その理由に僕は気付いてはいたが、意地悪心が湧き、居間にてお茶をすすりながら、横目でそれを追い掛けていた。
大体、母が悪い。
彼女を玄関等に忘れたりするからだ。
水が恋しいと、僕に声を掛けてくる程までに追い詰めて。
足袋で畳を拭いているかの様に、歩き回る母。
ちらりと見つめ、僕はこそりと笑う。
意地悪でもしない限り、僕の気は晴れないだろう。
「宗久さん」
僕の後ろを右往左往していた母が、ようやく声を掛けてきた。
「何ですか?」
「あなた、玄関にあったものを知りませんか?近山さんから頂いた……」
近山さん。
梅屋敷の主人の名だ。
えぇ、よく知っておりますよ。
頂いたもの。
「探しものは、あそこですよ」
僕は、居間の隣部屋に置かれた仏壇を指した。
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彼女が言った通り、母が帰宅した。
しかし、何やらそわそわと辺りを見回している。
その理由に僕は気付いてはいたが、意地悪心が湧き、居間にてお茶をすすりながら、横目でそれを追い掛けていた。
大体、母が悪い。
彼女を玄関等に忘れたりするからだ。
水が恋しいと、僕に声を掛けてくる程までに追い詰めて。
足袋で畳を拭いているかの様に、歩き回る母。
ちらりと見つめ、僕はこそりと笑う。
意地悪でもしない限り、僕の気は晴れないだろう。
「宗久さん」
僕の後ろを右往左往していた母が、ようやく声を掛けてきた。
「何ですか?」
「あなた、玄関にあったものを知りませんか?近山さんから頂いた……」
近山さん。
梅屋敷の主人の名だ。
えぇ、よく知っておりますよ。
頂いたもの。
「探しものは、あそこですよ」
僕は、居間の隣部屋に置かれた仏壇を指した。
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