宵の花-宗久シリーズ小咄-
亡くなった祖母が購入したという、金の細工が施してある仏壇の最下段に、母が言うそれは鎮座している。
彼岸花だ。
瑞々しく開く彼岸花は、朱色も鮮やかに、その存在感を確かなものにしていた。
「宗久さんが活けてくれたの?」
仏壇の前に座り、彼岸花が活けられた花瓶を撫でる母。
「まぁ…そんな様なものです」
実際は、助けを求められたのだが。
「私、すっかり忘れてしまいましてねぇ…会合の途中で思い出したんですよ」
ほっとしたのか、笑う母。
ほっとしたのは、彼女も同じだ。
彼女の場合は、命懸けであったろうが。
「母さん、気を付けて下さいよ。おかげで僕は、散歩の時間がなくなりました」
「散歩?」
「それと、あまり彼岸花を粗末に扱うと、来年、庭の桜が咲いてくれないかもしれませんよ」
「桜が?」
首を傾げる母に笑いを返し、僕は彼岸花を見つめた。
鮮やかな朱色は、金刺繍の細い線の様な花びらを際立たせている。
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彼岸花だ。
瑞々しく開く彼岸花は、朱色も鮮やかに、その存在感を確かなものにしていた。
「宗久さんが活けてくれたの?」
仏壇の前に座り、彼岸花が活けられた花瓶を撫でる母。
「まぁ…そんな様なものです」
実際は、助けを求められたのだが。
「私、すっかり忘れてしまいましてねぇ…会合の途中で思い出したんですよ」
ほっとしたのか、笑う母。
ほっとしたのは、彼女も同じだ。
彼女の場合は、命懸けであったろうが。
「母さん、気を付けて下さいよ。おかげで僕は、散歩の時間がなくなりました」
「散歩?」
「それと、あまり彼岸花を粗末に扱うと、来年、庭の桜が咲いてくれないかもしれませんよ」
「桜が?」
首を傾げる母に笑いを返し、僕は彼岸花を見つめた。
鮮やかな朱色は、金刺繍の細い線の様な花びらを際立たせている。
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