宵の花-宗久シリーズ小咄-
「このお宅は、庭が生きていらっしゃいますわね」
庭を見つめる彼女につられ、僕もまた、庭へと視線を移す。
夕焼けが、すでに一面に広がっていた。
空も地面も、彼女が着ている着物の様な朱色に染められた庭の景色は、独特の世界観を感じさせる。
まるで、朱いスノードームの中に居る様な感覚だ。
それを見つめる彼女の瞳も、また、その色を鮮やかに反射させている。
強く、たくましい色……。
「このお庭の主は、あの紫陽花でございますね」
そう言い、彼女はゆっくりと、枝のみにされた紫陽花を細い指で指し示す。
「わかりますか?」
「はい、一番古いのはあの桜ですが、彼女は少し気まぐれですわね」
確かに、あの桜は気分屋だ。
花を早く散らせたり、満開をじらしたりする悪戯好きだ。
毎年、植木屋に手入れを依頼してはいるが、それでも気分次第で花を咲かせる。
なぜなのかと首を傾げる母を見て、毎年、僕だけが笑えてしまうのだ。
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庭を見つめる彼女につられ、僕もまた、庭へと視線を移す。
夕焼けが、すでに一面に広がっていた。
空も地面も、彼女が着ている着物の様な朱色に染められた庭の景色は、独特の世界観を感じさせる。
まるで、朱いスノードームの中に居る様な感覚だ。
それを見つめる彼女の瞳も、また、その色を鮮やかに反射させている。
強く、たくましい色……。
「このお庭の主は、あの紫陽花でございますね」
そう言い、彼女はゆっくりと、枝のみにされた紫陽花を細い指で指し示す。
「わかりますか?」
「はい、一番古いのはあの桜ですが、彼女は少し気まぐれですわね」
確かに、あの桜は気分屋だ。
花を早く散らせたり、満開をじらしたりする悪戯好きだ。
毎年、植木屋に手入れを依頼してはいるが、それでも気分次第で花を咲かせる。
なぜなのかと首を傾げる母を見て、毎年、僕だけが笑えてしまうのだ。
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