宵の花-宗久シリーズ小咄-
たおやかに、彼女は立ち上がる。
朱色の振袖が、畳に擦れる音が響く。
失礼致しますと、彼女は頭を下げた。
黒髪が、はらりと流れ、彼女のあどけない美貌を包む。
「父の話相手にでも、なってあげて下さい」
「はい…」
彼女は、迷う様に瞳を伏せた。
「お名残、惜しゅうございます…」
髪を耳にかける彼女の仕草。
その黒髪と、朱色の着物との強いコントラストが、印象深く目に焼き付いてくる。
「宗久様」
「何でしょう」
「宗久様は、わたくしがお好きでしょうか?」
思わず、僕は彼女を見上げて笑った。
「ええ、好きですよ。あなたの姿は、驚異的な自然の造形美と言えるでしょう」
良かったと、彼女は満面の笑みを美貌に乗せた。
僕へと歩み寄り、ゆったりと身体を屈ませる。
僕を真っ直ぐに見上げてくる、潤んだ、黒瞳。
「お会いできて、嬉しゅうございました」
.
朱色の振袖が、畳に擦れる音が響く。
失礼致しますと、彼女は頭を下げた。
黒髪が、はらりと流れ、彼女のあどけない美貌を包む。
「父の話相手にでも、なってあげて下さい」
「はい…」
彼女は、迷う様に瞳を伏せた。
「お名残、惜しゅうございます…」
髪を耳にかける彼女の仕草。
その黒髪と、朱色の着物との強いコントラストが、印象深く目に焼き付いてくる。
「宗久様」
「何でしょう」
「宗久様は、わたくしがお好きでしょうか?」
思わず、僕は彼女を見上げて笑った。
「ええ、好きですよ。あなたの姿は、驚異的な自然の造形美と言えるでしょう」
良かったと、彼女は満面の笑みを美貌に乗せた。
僕へと歩み寄り、ゆったりと身体を屈ませる。
僕を真っ直ぐに見上げてくる、潤んだ、黒瞳。
「お会いできて、嬉しゅうございました」
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