先生観察日記

『やってきたのは、誰もいない理科準備室。

薬品の匂いが、鼻をくすぐる。


「どうぞ、入って」


中に入ったあたしを確認して、先生はドアを閉めた。


そしてなぜか「カチッ」という、ロックの音……?


驚いたあたしが見たのは、すぐそばににじり寄る先生の大きな体だった』

 
……閻魔帳を忘れたって、普通はあんまり言わないぞ。

教務手帳、または単に手帳だろうが。


もしや、俺がいつも閻魔帳って言ってるせいか!?

あの妄想女子には、少し受験『地獄』の苦しみを知って欲しいという気持ちから、つい『閻魔帳』なんて言葉を大っぴらに使ってしまうのだが。


今回は理科の教員なんだな。

理系の眼鏡男子、ときたら、次なる『乙女の萌えポイント』は……。



『先生は、あたしの首に手を伸ばしてきた。


「なっ! 何をするんですかっ!」


「お前、女だろ?」


にやりと笑った先生の眼は……笑っていなかった』

 
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