先生観察日記

イスに座っていた先生が、いきなり立ち上がった。

何だろう?


推定180センチの先生が、公称160センチの私の正面に立った。

胸元のadidasマークが、ちょうど目の前にある。


へ~、ジャージはadidasを愛用なのね、なんて心の中のネタ帳にメモっていたら。


「よく頑張ったな。よ〜しよしよしよしよし!」


頭を勢いよくなでなでされた。

びっくりして上を見たら、満足そうに笑う先生の顔が、私を見下ろしていた。

つられて私も笑顔になる。

だってね、先生から頭なでなでされたのなんて、小学生以来だもん。


でもなんかこのなでなで、海にいる生き物の名前で知られる某有名小説家が、犬だの猛獣だのをあやしてるときと同じ扱いじゃない!?


「……先生、私、犬じゃないんですけど」


「ハハハ。安西って何かうちの犬に似てるんだよな」


「先生って、犬飼ってたんですか?」


「昔、な。人懐っこくて、元気な犬だったぞ」


「へ〜。私に似てたなら可愛かったんでしょう?」



私の頭に浮かんだのは、リボンをつけたトイプードルの女の子。



「おう! そりゃあもう可愛かったぞ〜!

雑種のオスだけど」


犬扱い、しかもオス犬ですか、私は……。



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