先生観察日記

……先生、何しに来たの?

手にはノートのようなものを持ち、何かをメモしている。


まさか……予備校で培ったと言っていた、人の講習を見て勉強するっていうアレですか!?

いや、このおじいちゃんから先生が学ぶことは何もないはず……。

私はますます講習の内容そっちのけで、後ろにいる先生の存在感にそわそわしはじめたのだった。



それから1時間経過。



やっと退屈な講習が終わった。

帰り支度を始めた私の横に、松本先生がやってきてこっそり囁いた。


「社会科準備室で待ってろ」


誰もいない準備室で待つこと約15分。


その隙に、先生の机を眺めた。


よく、今まで受け持った生徒や、自分のお子さんの写真を飾る先生がいるけど……。


先生は、何も飾っていない。

プリントか何かがデスクマットに挟まっているだけだった。



「悪い。待たせたな」


先生がノートを手に戻ってきた。

『教務手帳』と金色の文字で書かれた、青い表紙の丈夫そうなノートだった。



「ねぇ先生、どうして講習見に来たの?」


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